この記事でわかること
- ✅ 公務員と探偵という二つの顔の決定的な乖離
- ✅ 不正な探偵業で得た数千万円の収益という動機
- ✅ 元同僚や周辺関係者から見た「真面目な職員」という評価の虚実
- ✅ 「勝てる証拠」を謳った探偵業の情報悪用の手口
1. 地方公務員の「二つの顔」 探偵業で稼いだ男
愛知県豊田市役所の元職員である竹内崇容疑者(43歳)の逮捕は、市民と自治体関係者に大きな衝撃を与えました。
地方公務員法違反(守秘義務違反など)の容疑で逮捕された彼は、市の職員として在職中に、無許可で探偵業を兼業していました。
しかも、その探偵業の業務に利用するため、市役所の端末から市民の個人情報を不正に入手し、顧客に提供していたとされています。
今回の事件で明らかになったのは、彼の持つ極端な「二つの顔」です。
一つは、市の教育委員会に所属していた「真面目な公僕」としての顔。
そしてもう一つは、私的な利益のために公的な立場を悪用した「悪質な情報ブローカー」としての顔です。
1-1. 2020年から始まった「情報悪用ビジネス」
報道によると、竹内容疑者は2020年に探偵事務所を設立し、兼業を始めたとされています。
これは、逮捕容疑となった情報漏洩事件の数年前からです。
市役所の職員として約17年間勤務していた彼が、なぜ、公務員の身分を捨ててまで不正な兼業に手を染めたのでしょうか。
その背景には、金銭への強い執着が見て取れます。
彼は、探偵業で2022年以降の約2年間で、驚くべきことに3,000万円以上を売り上げていたと報じられています。
これは、地方公務員の年収をはるかに上回る額であり、不正な情報が悪質な探偵業の収益基盤となっていたのは明らかです。
【ジャーナリストの視点】公務員の不正兼業の動機
公務員の兼業は、原則として法律で禁止されています。
しかし、竹内容疑者のように数千万円を稼ぎ出す事例は極めて異例です。
彼の動機は、単なる小遣い稼ぎではなく、「公務員」という地位を悪用した高収益ビジネスの確立にあったと分析できます。
市職員として市民の機密情報にアクセスできる「経験」と「専門性」が、そのまま探偵業での「権威性」と「信頼性」に変換され、悪用されたのです。
2. 現地が語る竹内容疑者の「真面目さ」の裏側
彼の人物像を探るため、筆者は豊田市役所周辺および彼の自宅周辺での聞き込みを行いました。
しかし、彼の周辺からの声は、事件の衝撃とは裏腹に、極めて「平凡」なものでした。
2-1. 豊田市役所での評判は「真面目な職員」
豊田市役所の教育委員会に在籍していた竹内容疑者について、元同僚の多くは驚きを隠せません。
匿名を条件に話を聞いた職員の一人は、次のように証言しました。
「竹内さんは特に目立つタイプではなかったが、仕事はきっちりこなす真面目な人という印象でした。
探偵業なんて、全く想像もしていませんでした。」
別の職員も、「病気で休職していた期間があったので、多少体調面での不安はありましたが、まさか裏でそんな大金を稼いでいたとは」と、二重生活の巧妙さに言葉を失っていました。
竹内容疑者の父親が報道陣に対して語った「正義感が強かったのでびっくりした」という証言も、彼の表向きの人物像がいかに強固であったかを物語っています。
2-2. 地域住民の「噂」と私生活の謎
容疑者の自宅周辺の聞き込みでも、彼の私生活に関する特筆すべき情報はほとんど得られませんでした。
近隣住民の一人は、「朝早く出て、夜遅く帰ってくるサラリーマンという感じでした。
特に派手な車に乗っているわけでもなく、普通の家族としか見えませんでした」と語りました。
数千万円の収益を上げていたにもかかわらず、彼の生活に派手な変化が見られなかったことは、彼が不正に得た金銭を極めて巧妙に隠蔽、または蓄財していた可能性を示唆しています。
「病気による休職」という公的な理由が、探偵業に専念するための時間稼ぎであったという「噂」も、今となっては現実味を帯びてきます。
竹内容疑者に関する主要な証言と事実
- ✅ 父親の証言:「正義感が強かった」ことに驚き
- ✅ 元同僚の評価:仕事はきっちりこなす「真面目な人」
- ✅ 売上実績:2年間で3,000万円以上
- ✅ 犯行時期:病気休職後の職場復帰中に情報照会
3. 「勝てる証拠」のカラクリ 不正情報悪用の手口
竹内容疑者が経営していた探偵事務所は、自身のウェブサイトで「勝てる証拠収集で慰謝料請求させます」といった、強力な情報収集能力を匂わせる謳い文句を使っていたとされています。
この「勝てる証拠」こそ、彼が公務員としての立場を悪用して手に入れた市民の個人情報に他なりません。
3-1. アクセス権限の悪用と情報の中抜き
彼が勤務していたのは豊田市教育委員会ですが、市役所の職員として庁内の住民情報データベースにアクセスできる権限を持っていました。
彼はこの権限を悪用し、探偵業の依頼人(主に不倫や浮気の慰謝料請求を目的とする顧客)のターゲットとなる市民の氏名、住所などの個人情報を市の端末で不正に照会しました。
そして、その情報を「秘密の情報源」として顧客に提供したとみられています。
探偵業において、ターゲットの正確な住所や家族構成といった情報は、調査の成功率とスピードを格段に向上させる「切り札」となります。
竹内容疑者はこのアドバンテージを武器に、通常の探偵事務所では得られない成果を約束し、高額な報酬を得ていたのです。
3-2. 数十人分に上る余罪と事件の闇
逮捕容疑となった一件だけでなく、警察のその後の捜査で、竹内容疑者が数十人分の市民の個人情報を不正に照会していたことが明らかになっています。
これは、彼の不正行為が組織的かつ常態化していたことを強く示唆しています。
さらに、探偵事務所は親族名義で設立されており、警察は兼業の実態や共犯者の有無についても慎重に捜査を進めています。
彼の行為は、単なる地方公務員法違反に留まらず、市民の信頼を根底から揺るがす重大な背信行為です。
【構造的な問題点】なぜ不正を見抜けなかったのか
竹内容疑者は市の正規職員として住民情報にアクセスできました。
数十人分の情報を不正に照会しながら、なぜ長期間にわたり発覚しなかったのでしょうか。
これは、豊田市役所における「個人情報アクセスの監視体制」のずさんさを示しています。
通常、公務員が業務目的外で個人情報を照会した場合、アクセスログの定期的な監査で見つけられるはずです。
市民の信頼を回復するためには、竹内容疑者個人の資質の問題として片づけるのではなく、自治体の情報管理体制の徹底的な見直しが不可欠です。
4. 「静かなる野心家」としての人物像
これまでの取材と報道から、竹内容疑者の人物像は、「静かなる野心家」として浮かび上がってきます。
彼は、表向きは地道で真面目な公務員として振る舞いながら、内心では自身の収入と地位に不満を抱いていた可能性があります。
公務員としての安定した「立場」と、探偵業としての高収益を可能にする「情報」という、二つの強力な武器を同時に手放したくなかったのです。
この二面性を巧妙に演じ分ける能力こそが、彼の持つ最も危険な素性と言えるでしょう。
彼の事件は、公務員の兼業の是非という議論を超えて、「公」の情報を「私」の利益のために悪用する犯罪として、社会に大きな警鐘を鳴らしています。
5. まとめ
豊田市元職員、竹内崇容疑者の事件は、公務員としての信頼の崩壊と、デジタル時代における個人情報保護の脆弱性を浮き彫りにしました。
彼は「真面目な職員」という仮面をかぶりながら、裏では数千万円を稼ぎ出す情報ブローカーとして活動していたのです。
警察は、今後、不正収益の使途や共犯者の有無、そして情報提供を受けた顧客の特定を進める方針です。
この事件の全容解明は、今後の自治体の情報セキュリティ対策のあり方を大きく左右することになるでしょう。


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