『ウィキッド』のアリアナ・グランデ:歌唱力とキャスティングの裏側、グリンダ役への意気込み

歌手情報

この記事でわかること

  • アリアナ・グランデが全てを中断した壮絶なキャスティング秘話
  • ポップスとは一線を画すコロラトゥーラ唱法の驚異の歌唱技術
  • グリンダ役への幼い頃からの憧れと人生をかけた深い意気込み
  • シンシア・エリヴォら共演者との献身的な撮影現場の取り組み
  • アイコニックなグリンダの衣装における彼女の貢献度

1. 幼い頃からの夢の実現:キャスティングの裏側と壮絶な道のり

世界的なポップスターであるアリアナ・グランデが、映画『ウィキッド』のグリンダ役を獲得した経緯は、単なる人気女優の抜擢ではありません。

これは、彼女にとって約20年にわたる夢であり、その実現のために凄まじい努力と覚悟を持って臨んだ結果です。

1.1. すべてを犠牲にした長期間のオーディション

アリアナは、この役のオーディションを受けるために、当時並行して進んでいた自身の音楽活動や他のプロジェクトをすべて中断しました。

ジョン・M・チュウ監督は、当初、有名歌手ではなく無名の舞台俳優をグリンダ役に検討していました。

この不利な状況を覆すため、アリアナは約半年間、毎日徹底した歌と演技のレッスンに時間を費やしました。

グリンダ役への強い献身

  • 夢の役: 彼女は10歳の頃に初めて『ウィキッド』を観劇して以来、グリンダ役に強い憧れを抱き続けていた。
  • すべてを中断: 役を掴むため、ポップスターとしてのキャリアのペースを落とし、すべてのリソースをオーディション準備に集中させた。
  • 「グリンダそのもの」: 監督は最終オーディションで、アリアナが「入室した瞬間からグリンダそのものだった」と語り、その役へのなりきりぶりに衝撃を受けたと明かしている。

1.2. 初代グリンダ、クリスティン・チェノウェスからの教え

アリアナは、舞台版で初代グリンダを演じたクリスティン・チェノウェスを長年尊敬しています。

チェノウェスは彼女の長年の憧れの存在であり、公私にわたる師匠としてアドバイスや指導を受けてきました。

チェノウェスは、アリアナの歌声の素晴らしさを認めつつも、グリンダ役に求められる技術的な厳しさについて助言を与えました。

アリアナは、この指導を受け、自身のポップスでの歌い方を一度リセットし、ミュージカル特有の発声法と技巧を身につけました。

2. 驚異の歌唱力:ポップスターから本格的なクラシカル・ソプラノへ

アリアナ・グランデのグリンダ役における最も注目すべき点は、彼女がポップスターの歌唱スタイルを完全に変革し、ミュージカルに必要な技術を習得したことです。

2.1. 舞台への敬意を込めた「ライブ収録」への挑戦

映画『ウィキッド』の歌唱シーンは、事前に収録された音源に口パクで合わせるのではなく、その場ですべて生歌でレコーディングされました(ライブ収録)。

この手法は非常に難易度が高く、アリアナとエルファバ役のシンシア・エリヴォの二人が、舞台で毎日生歌を披露する舞台俳優への敬意から、監督に強く進言したことで採用されました。

この決断により、彼女たちの歌声には演技の感情がリアルタイムに反映され、映画の感動を一層深いものにしています。

2.2. コロラトゥーラ唱法の習得

グリンダの楽曲、特に「Popular」や「Thank Goodness」は、非常に高い音域と華麗な装飾音符を多用するコロラトゥーラ・ソプラノの技術が求められます。

ポップスでは、主にヘッドボイスやミクストボイスを使うアリアナですが、この役のためにクラシックの発声法を徹底的に学びました。

特に、超高音域での明瞭な発音と、音階を正確に素早く駆け上がる超絶技巧を自然に披露できるレベルに到達しました。

歌唱力への評価ポイント

  • テクニカルな完璧さ: クラシカルな歌唱法における、完璧な音程とリズム感。
  • 感情の深さ: ライブ収録により、グリンダの「見せかけの華やかさ」「内面の不安」を歌声で表現。
  • 声色の多様性: 陽気なコミカルソングから、感情的なバラードまで、声色を自在に変化させる。

3. グリンダ役への意気込み:人生を変えた役作り

アリアナ・グランデは、グリンダ役を単なるキャリアのステップとしてではなく、自身の人生と深く向き合うきっかけとして捉えています。

3.1. 役との共鳴と自己成長

彼女はインタビューで、グリンダというキャラクターを演じることは「人生で最高の幸せ」だと語っています。

グリンダは、最初は世間知らずで承認欲求の強い女性として描かれますが、エルファバとの出会いを通じて真の自分を見つけ、成長していきます。

アリアナは、「グリンダを通して、そして彼女と共に、自分自身の多くの部分を癒した」と明かしており、この役作りが自己理解を深めるプロセスであったことを示しています。

3.2. コミカルさと内面の複雑さの表現

グリンダの魅力は、そのコミカルな言動と、繊細で複雑な内面のギャップにあります。

アリアナは、幼い頃の子役経験で培ったコメディのタイミングを駆使し、グリンダの「おバカ可愛らしさ」を自然で愛される形で表現しました。

監督は、彼女の演技には単なる笑いだけでなく、キャラクターの視点を深く理解した上でのユーモアがあると絶賛しています。

これにより、観客はグリンダを嘲笑するのではなく、彼女と一緒に笑い、彼女の成長を心から応援することができます。

4. エルファバとの「真の友情」:シンシア・エリヴォとの深い絆

『ウィキッド』の物語の核心は、グリンダとエルファバという正反対の二人の女性の間に育まれる友情です。

この友情をスクリーンでリアルに表現するため、アリアナとエルファバ役のシンシア・エリヴォは、撮影前から深い信頼関係を築きました。

4.1. 撮影前の「ソウルメイト」化

アリアナはシンシアのことを「ソウルメイト」と呼び、二人は役柄の親友関係を自然に演じるために、撮影期間中も現場の外で頻繁に時間を共にしました。

シンシア・エリヴォは、トニー賞を受賞した本格的な舞台女優であり、その圧倒的な歌唱力と演技力はアリアナに大きな刺激を与えました。

二人はお互いの才能を深く尊敬し合い、映画の成功という共通の目標に向かって協力し合いました。

二人の相互作用の重要性

  • 化学反応: 監督は、アリアナとシンシアの間に本物の愛と絆があったからこそ、感動的な友情の物語が実現したと強調。
  • 演技の補完: アリアナはポップスで培ったカメラ前での表現力で、シンシアは舞台で培った感情の爆発力で、お互いを補い合った。
  • 「For Good」の深み: 物語のクライマックスで歌われる名曲「For Good」の感動は、二人の私的な信頼関係によって格段に増している。

4.2. 監督 ジョン・M・チュウの評価

『クレイジー・リッチ!』などで知られるジョン・M・チュウ監督は、アリアナのキャスティングが完璧であったと繰り返し強調しています。

監督は、彼女の持つ自然な華やかさと、役作りへの驚くべき献身性が、グリンダというキャラクターにリアリティと深みを与えたと評価しています。

特に、彼女がグリンダの二面性を表現する際に示した繊細な演技指導への反応の速さは、監督を感嘆させました。

5. ビジュアルへの貢献:ファッションアイコンとしての影響力

アリアナ・グランデは、単なる演者としてだけでなく、グリンダのアイコニックなビジュアルを作り上げる上でも重要な影響力を発揮しました。

5.1. 「グリンダ・ピンク」の進化

グリンダのイメージカラーである「ピンク」は、アリアナの私服や過去の作品でも象徴的に使われてきた色です。

衣装デザイナーのポール・タゼウェルは、アリアナの持つ現代的なファッションセンスと、グリンダのクラシックな魅力を融合させました。

映画版の衣装は、舞台版への敬意を払いながらも、より繊細で幻想的な質感を持つように進化しています。

5.2. 象徴的な衣装とアクセサリー

グリンダがオズに降り立つ際に着用する「バブル・ドレス」や「バブル・クラウン」は、その再現度の高さと豪華さで話題を集めました。

特に、ティアラなどのアクセサリーには、Swarovski(スワロフスキー)のクリスタルがふんだんに使用され、グリンダの持つ圧倒的な華やかさを表現しています。

アリアナ自身が細部にわたるデザインチェックに参加し、キャラクターの魅力を最大限に引き出すビジュアルを作り上げました。

6. 『ウィキッド』二部作の公開情報と今後の展望

映画『ウィキッド』は、壮大な物語を描き切るため、二部作として制作されています。

アリアナ・グランデのグリンダとしての旅は、まだ始まったばかりであり、第二部ではさらに複雑で深みのある演技が期待されています。

6.1. 日本公開スケジュール

第一部『ウィキッド ふたりの魔女』は、本国公開から遅れて2025年3月7日(金)に日本で公開される予定です。

第二部は、第一部の約一年後に公開されることが決まっており、グリンダとエルファバの最終的な運命が描かれます。

6.2. グリンダ役が残す影響

このグリンダ役は、アリアナ・グランデが単なるポップスターではなく、本格的な女優として認められる決定的な作品となりました。

彼女の歌唱力、演技力、そして役への情熱は、批評家や観客からすでに高い評価を得ており、今後の映画界での活躍にも期待が高まります。

長年の夢を叶えるためにすべてを捧げた彼女の姿は、多くのファンに感動とインスピレーションを与え続けています。

アリアナ・グランデの言葉

「この役は、私に多くのことを教えてくれました。グリンダの成長は、私自身の成長でもあります。」

「ポップスターとしての自分とは全く違う、人生をかけた挑戦でした。」

7. 歌唱力と技術のさらなる深掘り:ミュージカル発声とクラシックの融合

アリアナ・グランデがグリンダ役で示した歌唱力は、ポップスからミュージカルへの技術的な飛躍の最たる例です。

彼女が習得した技術は、単に高音が出るというレベルを超え、ブロードウェイの要求水準に達しています。

7.1. ミュージカル発声の習得と声帯の変化

ポップスの歌唱では、息を多めに含むエアリーな発声や、ヘッドボイスを多用しますが、ミュージカルでは声を前に出す強い発声(ベルティング)が必要です。

特にグリンダの歌は、ベルティングとクラシカルなソプラノの高音域を自在に行き来する必要があります。

アリアナは、このために声帯の筋肉を鍛え、ポップスとは異なる声の響かせ方を徹底的に訓練しました。

これにより、彼女は声の耐久性を高め、二部作の長期間にわたる過酷なライブ収録に耐えることができました。

7.2. 感情表現としての「メリスマ」の活用

メリスマとは、一つの音節を複数の音符で歌う装飾的な歌唱技術です。

ポップスでは自由に感情表現に使われますが、グリンダの歌で求められるメリスマは、クラシック音楽の厳密なルールに基づいています。

アリアナは、この正確性と表現力を両立させ、グリンダの無邪気さや高慢さを歌声の技巧で表現することに成功しました。

8. 役作りの緻密なアプローチ:グリンダの内面と向き合う

グリンダは、ただ明るく華やかなだけでなく、深い孤独感と自己肯定感の低さを抱えるキャラクターです。

アリアナは、この複雑な内面を表現するために、脚本の裏側にあるキャラクターの動機を深く分析しました。

8.1. 表面的な笑顔の裏側にある孤独

グリンダの常に人から愛されようとする態度は、承認欲求の強さや、孤独への恐れから来ています。

アリアナは、特にエルファバとのシーンで、人気者としてのグリンダと、一人の親友としてのグリンダの間の感情の揺れを細やかに演じ分けました。

この二重性があることで、彼女のキャラクターは単なるコメディリリーフではなく、観客の共感を呼ぶ人間的な深みを獲得しています。

8.2. エルファバとの対比による成長

グリンダの成長は、常にエルファバの存在によって促されます。

アリアナは、エルファバの持つ純粋さと信念が、グリンダの見栄や虚栄心を少しずつ打ち砕いていく様子を丁寧に演じました。

特に、二人が友情を確かめ合うシーンでは、演技と歌唱が一体となり、真摯で感動的な表現を見せています。

9. 撮影現場での献身と環境作り

アリアナ・グランデは、グリンダ役の撮影において、プロフェッショナルな献身と、共演者を支える温かい姿勢で知られています。

9.1. 共演者への配慮とリーダーシップ

長丁場となる映画の撮影現場で、アリアナはムードメーカーとしての役割も果たしました。

彼女は、特に緊張感の高いライブ収録の際に、シンシア・エリヴォを精神的にサポートし、最高のパフォーマンスを引き出せるよう努めました。

このチームワークは、グリンダとエルファバの揺るぎない絆を映画に映し出すために不可欠でした。

9.2. 長期間の撮影に向けた体調管理

グリンダ役は、歌唱だけでなく、ワイヤーアクション体力的な要求も高い役柄です。

アリアナは、この長期間の撮影に耐えうるよう、厳格な体調管理とトレーニングを継続しました。

特に、ミュージカルで必要な声のケアには細心の注意を払い、プロのボーカルコーチと共に撮影期間中もトレーニングを欠かしませんでした。

10. まとめ:グリンダ役はアリアナ・グランデの「集大成」

映画『ウィキッド』のグリンダ役は、アリアナ・グランデのキャリアの新たな頂点を示すものです。

長年の夢を叶えるためにすべてを犠牲にした献身と、ポップスからクラシックへと昇華させた驚異的な歌唱力の進化が、この役には込められています。

彼女の緻密な役作り共演者との深い絆は、グリンダとエルファバの永遠の友情物語に、かつてないほどの感動とリアリティをもたらしました。

この作品は、彼女のアーティストとしての集大成であり、今後のキャリアにおける確固たる基盤となるでしょう。

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